今日も今日とて幽霊島の空は重苦しい鉛色の空であった。
そんな空の下、ミオは今日もジャガイモ畑で収穫作業を行なっている。エクラに視力を治してもらい、あの瓶底眼鏡から黄昏色の裸眼に戻っていた。レイやエクラに「その眼鏡姿も似合ってて可愛いんだけどね」と言われてなんだか面映い気持ちになったが、やはりこうした農作業があると裸眼の方がどうしても便利なのだ。
最初は非力でジャガイモの収穫も難航していたミオだが、最近はようやくコツが掴めて慣れてきた。それに単純に力がついてきたので当初の三倍以上の速さで作業が行えている。貴族の娘にしては体力と筋力がある方かも知れないと自信もついてきた。
それにだ。
「おう、奥方!これはどこに置きゃあいいんだ!?」
「箱詰め終わりました!」
畑のあちこちから手伝いの人たちが声をかけてくる。
最近では街の人たちが畑仕事を手伝ってくれるようになったのだ。前から手伝ってくれた人たちもいるが、ジャガイモを食べることが彼らの中で定着していく内に段々と手伝ってくれる人たちが増えてきたのである。そしてその中にはミオに石を投げた人たちもいた。こないだミオに謝ってくれた老人もいる。
いや街の人たちだけではない。エクラの治療を受けた人たちもリハビリと称して手伝ってくれていた。
お陰でジャガイモの供給も安定している。
島民にはこのジャガイモを無償で家族単位で毎日数個ずつ配給している。ジャガイモが足りない分は格安で買うか、こうして畑仕事の手伝いをすることになっていた。そう、畑仕事を手伝うのはボランティアではない。現物支給の歴とした仕事である。本来なら公共事業として賃金を手渡してやりたいところだが、島の経済状況的にはどうしても現物支給となってしまう。
だがジャガイモは貧困家庭の文字通りの命綱になっていた。
それでも生活のために渋々手伝うのではなく、美味しいからとお世辞でも島の人々が言ってくれるのでミオも心苦しさは和らぐ。
レイやグランツたちはジャガイモは島の経済の発展に貢献しているとは言うがミオにはあまり実感がない。
グリモワールのマンツーマンレッスンでも勉強し直したものの、彼女は数字にからっきし弱いのだ。
経済状況のグラフを出されても「?」が頭上で乱舞してしまう。何か上がってるのは何となく分かるが、何がどう言う風に上がっているのかは説明されてもさ